2016年10月28日金曜日

皮膚を冷却するプラスチック生地の開発

ちょっと面白い記事を見つけたので紹介します。

Engineers develop a plastic clothing material that cools the skin
http://phys.org/news/2016-09-plastic-material-cools-skin.html
クレジット:李崔グループ - スタンフォード大学

記事の概要
スタンフォード大学のエンジニアは、衣類に織り込むことで、天然素材や合成繊維よりもはるかに効率的に体を冷やすことのできる低価格のプラスチック生地を開発しました。

サイエンス誌は次のように述べています。
研究者は、この新しい生地が人々がエアコンなしで暑い気候でも涼しさを保つ衣服の基礎となる可能性があることを示唆しています。

「もし仕事をしたり生活したりする建物よりも人を冷却することができるならば、エネルギーを節約できることになります」と、スタンフォード大学准教授の李崔(リ・チェ)は言いました。

この新素材は2つの方法で体から熱を排出させる機能があり、コットンの服を着た場合よりもおよそ華氏4度ほど涼しくすることができます。
注: 摂氏30度=華氏86度、摂氏32度=華氏89.6度なので、だいたい摂氏換算で2度くらいかなぁ。

この生地の素材は素材を通じて汗を蒸発させることによって冷却します。こういったことをする素材は既に存在します。しかし、スタンフォード素材は第2の革命的な冷却機能を持っています。体から発する熱を、赤外線放射として、プラスチック製の生地を通過します。

この冷却生地を開発するために、スタンフォード大学の研究者はナノテクノロジー、フォトニックス(光学のこと)、そして化学を応用し、ポリエチレン(キッチンラップとして使っているような粘着力のあるプラスチック素材)に衣類として使える生地の特徴を与えました。それは熱放射、空気、そして水蒸気を通過し、可視光線に対して不透明です。

最も分かりやすい特徴は赤外線放射が素材を通過するということで、これは通常ポリエチレンの食品ラップの特徴です。もちろんキッチンラップは水を通さず、そしてシースルーですが衣類としては役に立ちません。

スタンフォード大学の研究者は、一度にこれらの欠点に取り組みました。

第一に、彼らはある種のナノ構造(可視光線に対して不透明)を赤外線放射(体の熱を逃がすことができる)に対して透過的にさせる電池に通常使われるポリエチレンの変異体を発見しました。これは可視光線に対して不透明なベース素材ですが、熱効率の目的では透過的でした。

そして彼らは化学的な処理を施すことで産業用ポリエチレンを修正し、水蒸気の分子がプラスチックのナノ細孔を通過するようにして、プラスチックが天然素材のように呼吸できるようにしました。と、研究チームメンバーのポー・チュン・スーは伝えました。
ナノ細孔をもつポリエチレンは、可視光線を反射するが、熱を逃がすことができます。
人々を冷却する服を作るために、この素材を使うことができます。
クレジット:Carla Schaffer / AAAS
この成功は、冷却素材のために追加の研究を研究者に与えました。この薄い素材をより生地のようなものにするために、3層のバージョンを作りました。ポリエチレンの2つのシートが強度や厚みを持たせるためのコットンで挟みます。

彼らの作った3層生地と比較的厚みを持ったコットンの生地で冷却性能のポテンシャルをテストしました。肌と同じように温かみのある表面上に2つの生地の小さなサンプルを置き、それぞれの生地がどのくらい熱を捉えるか測定しました。

「何かを着用するということは何らかの熱を捉え、それは皮膚を温かくします。」と、ファンは言いました。「もし熱放射を打ち消すことが私たちの唯一の関心事であるならば、何も身に着けないのがベストです。」

比較結果は、コットンの生地が彼らの冷却素材よりも皮膚の表面を華氏で3.6度温かくしたことが示されました。この違いは、人が新しい生地を身に着ることで、扇風機やエアコンのスイッチを押さなくさせるように感じさせることができるかもしれない、と、研究者は言いました。

研究者は、彼らの生地に色、質感、布のような特徴を加えるよう、研究を続けています。電池産業では既に大規模生産されている素材を適用させることは、製品化させることを容易にもするかもしれません。

「もしあなたが繊維製品を作りたいのならば、あなたは膨大な量を安価に作ることができなくてはならない。」、崔(チェ)は言いました。

この研究は、受動的に、つまり外部エネルギーを使うことなく、赤外線放射を拡散させたり捉えたりすることで、ものを温めたり冷やしたりする研究に対する新しい道を切り開くと、ファンは考えています。

「後になって分かったことですが、私たちがしたことのいくつかはとても単純なように見えますが、繊維製品の放射の特徴をエンジニアリングすることを、実際に見てきたことにもなりました。」、彼は付け加えました。


感想
もちろん、代償性発汗に対応できるかどうかという観点で読んでみました。
「一番冷やすことは身に着けないこと」と研究者は言っているので、体を冷やすということとは違うかもしれないです。でも、体には衣服を身につけなければなりませんから、それによって体感温度を下げるなら、十分価値があるんじゃないかと思いました。

ただ、代償性発汗が起きる時は体が発熱するんですよね。そして流れ出た汗は止まらない。
その熱の発散を十分にできる機能を持つかどうか、吸収した水分をうまく吸収・発散できるかどうかがポイントかなと思いました。

でも、真夏はそんなに体にフィットする服を着るわけじゃないから、吸水性の良いコットンの方がいいのかもとも思うのです。エアコン止められたら困るという意見もありそうです。

みなさんはこの新しい研究についてどう思いますか?

まるとん

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